ぼくは今まであまり映画を見てませんでした。それが変わったのがここ数年。
シンゴジラ
君の名は
この2つを見て、映画の面白さを(いまさら)知り、「面白い映画ないかなー」って探していたんです。映画好きの友人ができたのも理由です。
2016年の秋、ひとつ面白い映画ジャンルを見つけました。政治コメディです。
もうほんとに、今さら紹介するのも恥ずかしいんですが、面白かったのが
「帰ってきたヒトラー」です。
映画がスタートすると、配給会社とか製作会社などが出てきますよね。
そこで「GAGA(ギャガ)」という会社が目に入ったんです。御社は映画配給会社ですな。
「ずいぶんマニアックな映画を配給するんだな」って漠然と思っていました。
で、今回の「スターリンの葬送狂騒曲」、これもGAGAです。「万引き家族」のGAGAです。漠然と面白そうだなと思ったのです。
ちょっと脱線します。
シネコンには行きますか?というかシネコンで映画観ますか?
ぼくは少しかなりイラっとすることがあります。
本編開始前のCM(予告)とアナウンスが長すぎる上にウザすぎる!!
こっちは余裕をもって到着して、ポップコーン買って、時間通り入場しているのですよ。
それを何ですか。何十分もダラダラと。どんだけアピールしたいのよ早く始めなさいよ!
といっつも思っています。シネコン行きたくなくなります。
じゃあ早く本編入りなさいよ!
これはこの記事に対してです。すいません。
スターリンの葬送狂騒曲の話です。「コメディ」に分類されます。
某日、人を待つために時間を潰さなきゃいけないんだけど、愉快な気持ちで時間を潰せる映画を見つけた【公式】『スターリンの葬送狂騒曲』8.3公開/本予告 https://t.co/RR1U5wiAJS @YouTubeより
— おざきまくら (@ozakimakura_) 2018年8月31日
繰り返しますが、「コメディ」の映画です。
YouTubeで公開されている予告編も、かなりコメディ色の強いものとして紹介されてますね。
一応、原題も確認しておきましょう。
The Death of Stalin
「スターリンの死」ですよ。
邦題との温度差、すごくないですか?
たぶん、あの予告編と映画タイトルだけを知り、この映画をみた方は(特に後半)ほとんど楽しめなかったのではないか思うのです。
実際に、隣に座っていた方々は映画が終わったあと「後半寝ちゃった」って言ってました。
そうでしょうね。だって仕方ないもん。
この映画の前提は、スターリンの資質やソ連の歴史・政治が分からないと絶対楽しめないのです。
コメディだけど、実際にはドロドロの「政治」コメディ映画です。
ヒトラーを知らずに「帰ってきたヒトラー」を観るようなもんです。無謀すぎます。
幸いにもぼくは革命的な人間なので、楽しめました。
ただし、登場人物のご尊顔が史実とは結構違うので覚えるのに戸惑いました。
エジョフ、ベリヤ、大粛清(1930年代ですが)、ソ連共産党、スターリン、フルチショフ、スターリン批判くらいはwikiで確認した方がいいです。
それくらい、前提が必要な映画です。
要するにこの映画は、「スターリン亡きあとのトップリーダーは誰だ」問題なのです。
ソ連はいちおう社会主義の国でした。プロレタリア独裁の国、つまり共産党による一党独裁の国です。
民主主義の国ではなく独裁の国の場合、平和的にリーダーを選ぶことはとても難しいです。
おなじ独裁の国である中国は、それをシステム化してルーティーン化しているので(表面上は)死者が出ません。
ふつう独裁国家の次期ボスは、どれだけリーダー層に味方を作るか、関係者の賛同を得るかが、生死を分けることになります。
文字通り、負けたら死にます。
この「死ぬ」という言葉は二つの意味をもっていて、
肉体的に死にます(ほとんどは、なんちゃって裁判で銃殺刑などで死にます)
社会的に死にます(いなかったことにされます)
命がけのガチンコ勝負です。
そのかわり、勝てば官軍、絶対的な権力・富・名声を得ることができます。
こういうドロドロしたものが、この映画の中心になります。
単なるコメディではなくて、誰がボスになるのかという人間の醜いたたかいです。
これがわかると、この映画はすんごく面白くなりますよ。
ぼくはもう2回くらい観たいですもん。
また脱線します。
たまに、「選挙は莫大な金がかかってコスパ悪い」という声があります。
でも、じつは独裁国家の方がめっちゃコスパ悪いんです。
選挙?ありません。(あっても形式的)
選挙がない代わりに、日々の独裁政治を維持するコストがかかります。
それは、
- 独裁政治を支えるためにとんでもない数の秘密警察官が必要です
- 強制収容所で奴隷労働させられます(強制労働はコスパ悪いです)
- すぐ逮捕・粛清されるので労働力増えません(移民はスパイです)
- すぐ粛清されるので優秀な人材がいなくなります。
民主主義の国の方がはるかにお金がかからず、しかも平和に過ごすことができます。
しかもリーダー交代は法律によって静かに行われ、特別なルールを追加する必要はございません。
ほとんど無意味で莫大な支出(損失)をしなければならない独裁国家はどうやって維持されるのかというと、
- 資源をたっくさん持っている(石油とか)
- 独裁は続けるけど経済は自由にする(お隣)
金ですね、金。
なんだか脱線しすぎて、チャーチルの格言を思い出しました。
It has been said that democracy is the worst form of government except all the others that have been tried.
(民主主義は最悪な政治のやり方だろうけど、他のやり方の方がもっと悪やで)
意訳すぎますごめんなさい。
映画の話に戻りましょうか。
この映画のクライマックスはもちろん、あの人の失脚です。
失脚後はグロいです。
でもいまどき、グロい動画なんて溢れているじゃないですか。
でも、この映画のクライマックスはそれとは次元の違うグロさでした。
以下、史実だけどもしかしたらネタバレになるかも。見たくない人はここでBack
負けた側は、
- 即席の裁判で、
- 即決の判決を読み上げられ、
- 速攻で処刑場に連行され、
- その場で射殺されます。
史実なんですよね。この映画の「負けた側」だけじゃなくて、独裁国家のリーダー競争に負けた人たちはこんな感じで殺されていきます。
でもまだ、リーダーは恵まれています。
一般の国民は即席の裁判すらなく、
判決が読み上げられることもなく、
連行されて(もしくはその場で)殺されるんですけどね。
人の命を合法的に奪う。
日本ではたぶん、理解できないと思うんです。いちおう裁判所は機能してるし。
この映画、クライマックスは本当にグロテスクだと感じました。
生々しい。
でもまた観たい。前半部分と後半部分のギャップがありすぎでやんす。
でもGAGA様に言いたい。
ちょっとミスリードしてませんか?
本日はこの辺で。では。
追伸
「そうそうきょうそうきょく」早口言葉にしては簡単だと思いますが、
では「葬送狂騒曲」を100回手書きしてください、って言われたら、
「スターリン万歳」って言いそうになります(なりません)。