早い人は春、遅くても夏には大学生の就活が終わりましたね。
リクルートスーツを着て汗をかきながら歩いている就活生とすれ違うと「なんで必死になって企業に就職したいんだろう」って思うんです。
ちなみに僕は、就活を否定するものではありません。
その構造を考えてみたいとずーーーっと思っていたんです。
でもこういうのを見ちゃうと、企業とくに大企業に就職するというのはこういうことなんだなぁって…
日本人は人と違うとこが怖いと感じる国民性がある。それは子どもの頃からの学校での教育のせい。多様性を認めない意味の無い校則。髪が生まれつき茶色い人は黒に洗髪しなさい。髪が肩についたら結びなさい。ゴムも色の指定もあり。前髪は眉にかかってはダメ。靴下や靴の色の指定。ほんとに意味無い pic.twitter.com/hwRiWsdTnj
— KANA (@KANA75490398) 2018年9月9日
日本人の僕でさえ、ほとんど個体を識別できません。外国の方が見たらクローンに思われるのではないかと。
日本人は、圧倒的に起業する人が少なくて、自営業の割合も少なく、かつ、自営業を選ぼうとする傾向も少ない、といわれています。
たとえばこの記事。東洋経済の記事では次のように紹介されています。
日本人はリスクを嫌がって企業したがらない。自分で起業する満足感よりも、名の知れた大企業に勤める安定感を求める。
この気持ちはわかりますよ。多くの友人もこうやって就職して(ほとんどが転職して)安定した生活を送っています。
この記事でも警告するように、こういった日本人のマインドを日本の文化とか日本人論といったようなものに落とし込むのは危険なことです。
(文化決定論といって、注意すべき考え方です)
日本人が大企業に勤めることを良しとするようになったのは、歴史的な背景があります。
いまのところ、一番わかりやすいのは野口悠紀雄先生の本。
野口先生の自分史も入っているのですが、それを避けて読めば経済史の要点がわかります。(ごめんなさい)
この本でも述べられていますが、現在の日本経済の基本的なシステムが完成したのは、1940年台、戦争真っ只中の時代です。
(野口先生は1940年体制と名付けていますね。)
どういうことかというと、
戦争に勝つことを最大・唯一の目標にして、日本という国が持っている資源や人をその目標につぎ込んでいく。
その体制が(戦争勝利という目的はなくなったものの)現在まで残っているんだ、という指摘です。
その上、戦後経済のトレンドが、日本の経済体制にマッチして、その結果高度経済成長が実現。その結果が現在の日本だ、という主張です。
まず、日本の経済システムとはなにか。
さっきも言った通り、戦時中は戦争遂行のための、資源の集中。
個人よりも国。会社の利益よりも国の利益。個人の幸せよりも国の幸せ。
これは別に日本だけに特有のものではなくて、戦時体制(戦争に勝つための特別な体制)をとる国は多かれ少なかれこういったことをしています。
日本が戦争に負けても、この考え方は残るわけです。
個人よりも会社。会社の利益よりも国の利益。個人の幸せよりも会社の幸せ。
次に、戦後経済のトレンドが日本にマッチしたという話。どんなトレンドか。
それは、重化学工業が当時(1970年くらいまで)の最先端産業でした。
重化学工業。ヘビーインダストリー。重厚長大産業。
巨大な工場を(複数)持ち、たくさんの工員(ブルーカラー)と社員(ホワイトカラー)を抱える大企業のイメージです。
大企業は一つのムラでした。個人の幸せを追求するよりも、組織全体の幸せを追求した方が、めぐりめぐって自分の幸せになる。いい時代です。
大企業に入社したサラリーマンは組織のために働き、結果、組織の目標と自分の目標はほぼイコールになる。
重化学工業で圧倒的成長を果たした日本は、加工業・製造業に進んでいきます。
時代はかなり下りますが、その絶頂が1980年台です。ジャパン アズ ナンバーワン。
自動車の生産台数がアメリカを抜いて世界一になりました。
半導体の生産個数もアメリカを抜いて世界一になりました。
メイドインジャパンは日本人の誇りであると同時に、強力な価値でした。
「Appleは日本的経営・日本の大企業を見習うべきだ」
今となっては悪いジョークと思われるこの言葉。1980年台には真面目に議論されていたのです。
その結果どうなるかというと、優秀な人たちは自分で会社を作るよりも(起業するよりも)、既存の大企業に入社して、社内で出世を目指した方がお得だと考えるようになります。
すごく合理的な思考です。
会社作るより大企業に入った方がプラスになる、だから会社作らない。
このマインドが凝縮されている団体をみつけました。
経団連っていうんですけど、ご存知ですか?
日経新聞の記事がネットで話題になりましたね。
経団連をいまさら説明する必要はないと思いますが、
日本の大きな会社が加入する団体です。日本の経済団体のなかで一番大きくて、力をもっている団体です。
経団連会長は「財界総理」なんて言われた時代もありました。
この団体には、会長が1人、副会長が18人もいます。
リーダーが多すぎる典型的な例ですが…それは措くとして。
日経の記事には、驚くべき数字が並んでいます。
日本経済の実質的なトップリーダー19人のうち、
女性は0人
外国人0人
これくらいならまだ「納得」できるかも(日本だし)。
でも恐ろしいのは次の数字たちです。
転職経験があるのは0人
起業経験があるのも0人
これが何を示すのかというと、
日本を代表する大企業のトップの方々は、
22歳くらいで大学を卒業し、会社に入り、転職することなく、そのまま社内で出世して、社長になった人たち
ということになります。まさに「恐るべき同質集団」
ファミリーマートの会長さんがこんなことを言っていましたね。
「教授、伊藤忠に決まったので単位ください!」
つまり、いい大学に入ったが、ろくに勉強せず、コネで大企業に決まり、単位を懇願する。
そういうサラリーマンがモーレツに働き、社長にまでなった時代です。
いい時代だなぁ。
経団連の話に戻ります。
シャチョさんたちは、自分で会社を作ったことがない人たちです。経営のプロではなく、あくまで雇われ人ということですね。
この他にも、大手メディアのリーダーを分析した記事を見つけました。
大手メディアの取締役80人中、
女性は2人
転職経験があるのは1人
これが日本の実態です。
80年代、もしくは90年代くらいまではそれでもよかったんです。
みんな豊かだったし(1975年、一億総中流という言葉ができました)
それでもよかった、と言ったのは、結果が伴っていたからです。
ちょっと前、ダイヤモンドオンラインの記事が大いにバズりましたね。
1989年の世界の企業トップ50のなかに、日本企業はなんと34社あったんです。
50社中、68%を日本企業が占めていた時代です。なにもかもがうまくいっていた時代ですよね。
NTTという元国営の元バケモノ企業が堂々の世界1位。
銀行も頑張ってますね。
それが2018年にどうなったのかというと。
生き残ったのはトヨタだけなんです。逆にすごいぞトヨタ!
30年前とガラッと変わったのは、インターネット関連の企業の台頭ですね。
日本では銀行の合併が繰り返されてきましたが、1行としてランキングに残ることはありませんでした。
長くなりそうなので、後編に続きます。